厚生年金の平均月額は60代後半が約15万円で、80代後半は約17万円――。厚生労働省は厚生年金の年齢層別の受給額を初めてまとめ、28日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会に示した。今年4月1日時点で71歳以上の人は年金がより多くなる計算方式が使われていて、若くなるほど減る傾向にある。
最も多いのは85~89歳の17万959円で、65~69歳の15万118円とは約2万円の差があった。60~64歳は基礎年金がない人が多く、さらに少ない8万8353円。90歳以上は年金の加入期間が短い女性が多いことなどが影響し、15万5788円だったという。
4月1日時点で71歳以上の人の年金は、生まれた年ごとに違う乗率をかけるなどして支給額が決まっており、70歳以下の人より多くなる。乗率は生まれが遅くなるほど低くなる。
確かに、公的年金の「厚生年金」+基礎年金だけで計算すると、こうなるのであろう。しかし、実態はこの金額をずいぶん上回っている高齢の受給者も少なくない。大企業を中心とした厚生年金基金(企業年金)の存在が対象外されているからだ。一時経営破綻した日航の企業年金は月額30万円ほどであったように、大手では厚生年金と同額ほどの企業年金が支給されていた。
ところが、企業年金は事実上の破綻に近い状態となっている。将来的に存続できる企業年金はほとんどない、と私は考えている。経済が拡大し、若い就労者が増えて社会保障制度を支えるという構造が、もう成り立たない。年金に限って言えば、保険料を拠出する就労者が減るばかりで、受給者は当面増え続けるから、所得の再分配という機能が働かなくなる。
20~30代の世代は、国民年金すら納めていない人がすごく多い。国民皆年金制度は、もう破綻しているのだ。