神戸市営地下鉄海岸線(新長田-三宮・花時計前)が、開通16周年を迎える。1日平均乗客数は微増傾向にあるものの4万人台にとどまり、2007年度に下方修正した「20年度に5万3千人」の予測の達成はかなり厳しい状況だ。累積赤字は15年度末で約880億円に膨らんでいる。神戸市は沿線のにぎわいを生み出すことで乗客増を図っているポーズをしているが、海岸線の起点である三宮・花時計前駅から、JR線・阪神線・阪急線・地下鉄山手線・ポートライナーの各駅まで徒歩5分もかかるという不便さはかなりいたい。
海岸線は高齢化が進む臨海部の活性化を目的に約2350億円をかけ、01年7月に開通した。赤字の大きな要因は設備投資に伴う減価償却費などで、毎年数十億円が積み重なる。
というのは、表向きの言い訳で、2002年ワールドカップサッカー神戸会場への連絡線として採算も考えずに建設された、というのが本当のところだろう。神戸市は海岸線を造れば、JR和田岬線は廃止されると見込んでいたようだが、黒字の和田岬線を廃止する理由はJRにない。
西神山手線は毎年50億円ほどの黒字なのに、海岸線の赤字がそれを相殺してしまう。いっそのこと海岸線を廃線にしてしまうと、建設時の借金つまり起債を一括して償還しなければならない、というやっかいものだ。海岸線とほぼ並行して走る道路はかなり空いているから、バスをどんどん走らせれば、地下鉄利用者の需要は満たされるだろう。
「まずは営業収支を黒字化」(市交通局)するためには、1日平均で現在より約1万人多い5万5千人の乗客が必要。沿線のノエビアスタジアム神戸でJリーグの試合などのイベント頼みからの脱却が求められる。
「JRなどと比べて運賃が割高」という指摘を受け、昨年7~9月、1キロ以内の一駅間を半額にする実験をしたものの、乗客は微増にとどまった。
苦戦が続く中、市は15年度から沿線の事業者と連携。沿線の飲食店が参加した「海岸線バル」を催したり、商業施設内にフットサルコートを新設したりした。市企画調整局調査課は「まちが楽しいと思ってもらえるような取り組みを地道に続けたい」としている。
ノエビアスタジアムでJリーグの試合があるときは、JR和田岬線を臨時に大増発すればいいだろう。それだけのことだ。
沿線では、17年6月に市中央卸売市場本場(兵庫区)跡地に大型商業施設・イオンモールがオープンする予定だ。けど、たくさんの買い物をするファミリー層は自家用車を主に使うだろう。また、神戸市と県は新長田駅南再開発地区に行政機関の共同移転を計画しており、乗客増への追い風要素は多少ともあるだろう。交通局は「日中の人口は増える」と見込み、通勤での利用を呼び掛けるという。
ついでに言っておきたい。2001年に開通した海岸線のトイレ(大)は、どうしたわけか9割方が和式だ。学校トイレも洋式へと全面的に改装する時代なのに。和式トイレは使えない子どもばかりになっている。足腰の弱い高齢者にも和式は地獄のようなものだ。