1960年時点の日本人の平均寿命は、女70歳、男65歳であった。国民皆年金を旗に、国民年金保険料の徴収が始まったのは、1961年である。59歳まで保険料を納めても、支給開始年齢は65歳だから、男性なら平均寿命より長生きする人、女性なら5年間受給したら死んでしまう、という勘定だった。
それから半世紀して、女は87歳、男は81歳くらいまで生きるのが平均となった。受給期間で比較すると、女は22年間、男は16年間となる。当初の制度設計は全く通用しなくなった。
先日、小さな飲食店をひとりで営むマスターと話していたら、「いま49歳で、会社に勤めたことはないけど、国民年金も納めたことがない。自分の老後がどうなるかは考えないようにしている。テレビなんかでそうした特集をしたりしていると、すぐ別番組に変えてしまう」とのこと。