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Channel: 神戸・元町からの気まぐれ日記
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「国民皆保険の切り崩しは始まっています」

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 臨時国会を拒否し、2日間の閉会中審査でTPP審議をはぐらかした安倍政権が
 バラマキを始めた。最も反対の声が大きい農林水産業界を黙らせ、国民が売国
 条約の全容を知る前に承認に持ち込もうというハラなのだが、問題は農業だけ
 じゃない。米国が狙う本丸は医療分野だ。その懸念を早くから訴えてきたこの
 国際ジャーナリストの堤未果氏は、「国民皆保険制度の切り崩しはすでに始まっ
 ている」と警鐘を鳴らす。
 
 ――10月に大筋合意したTPPの全文が11月にようやく公表されました。
 
  日本政府が作成した30章97ページの「TPP協定の全章概要」はかなりは
 しょっています。ニュージーランド政府の英文文書はまったく同じ内容なのに
 598ページ。文書を含めた全体では1500ページ超が215ページに縮めら
 れています。話になりません。
 
 ――日本政府が公開したのは本当の意味の全文じゃないんですね。
 
 私が取材している医療や食品にとって重要な「知的財産章」「投資章」「透明性
 及び制度に関する規定章」は、138ページが21ページに圧縮されていま
 す。そもそも、TPPの正文(国際条約を確定する正式な条約文)は英語、仏
 語、スペイン語。域内GDPで米国に次ぐ経済力のある日本が入っていないこ
 とになぜ外務省は抗議しないんでしょう? 「不都合な真実」を国民に知られま
 いと、外務省が正文扱いを断ったんじゃないかという臆測まで広まっています。
 
 ――一般の国民が全容を知るのは不可能に近いですね。国会議員でも怪しいところ
 ですが。
  外務省は英語正文を読み込める国会議員はいないとタカをくくっているんで
 す。外務省が都合よく翻訳した「概要」をベースにいくら審議を重ねても意味
 がない。いつものように手のひらで転がされるだけです。
 
 
 ■TPPの正文翻訳を急がなければ安倍政権の思うツボ
 
 ――国会議員がしっかりしないとマズい。
 
 正文に記された内容を正確に把握した上で問題点を追及しなければ、承認を急ぐ
 安倍政権の思うツボ。日本語の正文がない以上、外注でも何でもして大至急翻
 訳する必要があります。法律には巧妙な言い回しで“地雷”を埋め込まれています
 から、国際弁護士のチェックも欠かせません。適用範囲が拡大したTPPの肝
 であるISD条項(国と投資家の間の紛争解決条項)はすべての国会議員が目を
 通すべきですし、厚労委に所属する先生だったら食の安全と医療は最低限押さ
 えるとか、それぞれの専門分野の正文を読むべきです。こういう時のために税金
 から政党助成金が配分されているんです。30人の国会議員で1章ずつ翻訳を
 頼めば、アッという間にできる作業でしょう。臨時国会が召集されず、審議が本
 格化する年明けの通常国会まで時間はあるんですから。
 
 ――正文の翻訳をHPなりSNSにアップしてくれれば、一般の国民も内容に触れ
 やすくなります。
 
 そうですね。まずは全章翻訳ですが、TPPは付属書と日米並行協議などの内容
 をまとめた2国間交換文書の3つで1セット。法律は付帯文書に核心を仕込ん
 でいることがままありますし、TPP参加の入場券と引き換えに日米並行協議で
 非関税障壁を要求されています。ここで日本がのんだ「譲歩リスト」は特に
 しっかり精査しなければなりません。TPPは「1%VS99%の情報戦争」。
 時間との勝負なんです。
 
 米国でTPPが批准されないという見通しは甘い
 
 ――「1%VS99%」とは、どういうことですか?
 
  TPPは「1%のクーデター」とも呼ばれています。1%というのは、米国の
 多国籍企業や企業の利益を追求するロビイスト、投資家やスーパーリッチ(超
 富裕層)のこと。彼らの目的は国から国家の機能を奪い、株式会社化して、効率
 良く利益を最大化することなんです。民営化は彼らをますます潤わせる手段で
 す。いま、米国で最も力のあるロビイストは製薬業界。彼らが虎視眈々と狙って
 いるのが日本の医療分野で、30年前から自由化の圧力をかけてきた。TPP
 はその総仕上げなんです。
 
 ――中曽根政権時代ですね。
 
  86年のMOSS協議(市場分野別個別協議)で米国から薬と医療機器の市場
 開放を求められたのが皮切りです。その後も対日年次改革要望書などで混合医
 療の解禁や米保険会社の市場参入、薬や医療機器の価格を決定する中医協に米企
 業関係者の参加を要求するなど、さまざまな注文を付けてきた。TPPを批准
 したら安倍首相の言う通りに皆保険の仕組みは残りますが、確実に形骸化しま
 す。自己負担限度額を設けた高額療養費制度もなし崩しになるでしょう。米国
 民と同じ苦しみを味わうことになってしまいます。
 
 ――米国では14年にオバマ大統領が皆保険を実施しましたが、そんなにヒドイ状
 況なんですか?
 
 通称「オバマケア」は社会保障の色合いが濃い日本の皆保険とは似て非なる制
 度。民間医療保険への加入を義務付けられたのです。日本では収入に応じた保
 険料を支払い、健康保険証を提示すれば誰でもどこでも病院で受診できる。オバ
 マケアは健康状態によって掛け金が変動する民間保険に強制加入させられる
 上、無加入者は罰金を科されます。オバマケアは政府に入り込んだ保険会社の重
 役が作った法律。保険会社はリスクが上がるという口実で保険料を引き上げ、
 プランごとにカバーできる医療サービスや処方薬を見直した。保険料は毎年値上
 がりするし、米国の薬価は製薬会社に決定権があるため非常に高額。日本と同
 程度の医療サービスを受けられるのは、ひと握りの金持ちだけ。当初喝采してい
 た政権びいきのNYタイムズまで保険料や薬価が高騰したと批判し始めました。
 
 ――盲腸の手術に200万円とか、タミフル1錠7万円というのは大げさな話じゃ
 ないんですね。
 
  WHO(世界保健機関)のチャン事務局長もTPPによる薬価高騰の懸念を示
 していますし、国境なき医師団も非難しています。「特許期間延長制度」「新
 薬のデータ保護期間ルール構築」「特許リンケージ制度」は、いずれも後発薬の
 発売を遅らせるものです。製薬会社にとって新薬はドル箱です。TPPによっ
 

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