教えてくれたのはHくんだった。貴族の邸宅ではなかったけど…
テニスコートは、英語で表記すると TENNIS COURT 。COURT とはもともとヨーロッパ貴族の大邸宅の中庭のことだ。貴族たちは、その中庭で、日本の羽子板がそうであるように、どれだけ多くラリーが続くかを競った娯楽として始まった。最初のボールは、コートの傍らにいる執事らが投げ入れた。これがサーブ、つまりSERVE であり、SERVICE つまりは召使いの「ご奉仕」であったのだ。
もっとさかのぼると、フランスのスポーツ(Jeu de paume)。この「ジュ・ド・ポーム」は、紀元前からエジプトにあった同様のスポーツを原型に8世紀にフランスで始まり、どれだけラリーが続くかが目的だった。そのため、ショットに攻撃性はなく、最初のショットはコートの外にいる召使が投げるボールを打つところからスタートするというルールであった。
英語では召使のことを「servant」と呼ぶが、これもフランス語から来た言葉、英語で「service」というと、もっぱら日本語の「サービス」と似たようなものと思ってもいいが、実はそれとは違う意味がある場合もある。
serviceには、「奉仕・サービス」以外に「業務」という意味もある。電車で「回送」という表示の下に「out of service」とか「not in service」と英語で書いてある場合があるけど、これは「業務から外れた列車ですよ」という意味である。
もとに戻るが、テニスはいつしか、何回ラリーができるかを楽しむゲームから、相手が返球できないボールを打ち込みあう「競い合い」とになっていったが、サーブという名称はそのまま変わらなかった。一番強力なショットが「ご奉仕」とは少しへんかもしれないが、バレーボールや卓球でもそのまま使われている。
さて、中庭の COURT には「法廷」という意味もある。大岡裁きとよく似ているのか、揉めごとの当事者はご奉行様の庭に正座して、越前の上が「これにて一件落着」とやっていたのは、ヨーロッパ貴族の中庭でも同じようだ。三権分立・司法という概念がまだなかったからだろう。
さて、私事ながら、両方の意味で忙しい。まあ、珍しい人だ。わかってくれるでしょ、「同類」さん。