セルジオ越後さんの評価
<ワールドカップ(W杯)ロシア大会:日本0-1ポーランド>◇1次リーグH組◇28日◇ボルゴグラード
日本の残り15分の戦い方の是非よりも、そうせざるを得なかった状況だったことが問題だ。引き分け狙いで、引き分けられない。1点を取り返す力がない。西野監督はチームの未熟さを感じて「現状維持」を指示したということ。先発を6人入れ替えたらレベルが落ちた。フレッシュなはずの武藤も酒井高も期待外れ。結局、層が薄いんだ。
ボールを回して時間を使うのは、ルール違反ではない。ただ「正々堂々」を美学とする日本の文化には合わないだろう。お金を払って見る人にも失礼だ。状況は違うが、ドイツGKノイアーが1点を追う韓国戦の最後に攻撃参加し、結果2失点目を喫した。これがW杯だ。ブラジルもセルビア戦でボールを回す時間帯があったが、追加点を取りにいっていた。
選手に責任はない。フェアプレーポイントで決めるのがナンセンスなのだ。FIFAだってまさか現実に起こるとは思っていなかっただろう。すべて同条件ならFIFAランク上位を進出させればいい。コロンビア戦で日本が警告1回だけですんだのは、相手が10人だったから。次のベルギー戦でルカクやE・アザールをファウルなしで止められるのか? 何よりベルギーに勝たなければ、日本の評価はさらに下がる。(日刊スポーツ評論家)
決着がつかず「フェアプレー」つまり反則カード数が少ないチームを上位とするのなら、ルールではないけど、日本のポーランド戦の残り15分は、まったくフェアプレイではない。ボール回しだけの時間は、監督の指示であってもレッドカード11枚に相当する。日大アメフトで危険タックルをせざるを得なかった選手が、日本記者クラブで単独会見した態度こそ、本当の勇気だ。彼は監督ら指導者を非難せず、違反プレイをしてしまった自分が悪い、と責任から逃げなかった。
サッカー日本代表は、彼の爪の垢でも飲むがよい。16強に進むのと、スポーツ選手として、人間としての誇りを棄てるのと、どちらを選ぶかだ。
私は、江川卓投手の空白の一日を想いだす。コミッショナーは「規約の不備を認めた上で、江川と巨人の契約を無効する裁断をすべきであった。ズルは許さん、と決めつけるだけでよい。それもできずに、小林繁を阪神へ交換トレードして、めちゃくちゃにしてしまった。江川自身も、この汚さに進んで身を委ねたわけで、私は永久追放すべきであった、と思っている。
日本のスポーツ界にフェアプレイの根本が欠如している証だ。野球・相撲を筆頭とする武道格闘技系などが特にひどい。フェアプレイとは対戦相手と真っ向勝負し、その相手に対するリスペクトを忘れないことだ。
いまさらながらではあるが、小平奈緒が2018ピョンチャン五輪、女子スピードスケート500で見せた態度こそ、私たちの誇りである。
自分のレースの直後に行われるイ・サンファらのために、観客に「静かにしてね」とアピールする。フェアな闘いをしたかったから、と小平は話した。
ことばはもう要らない